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全国47都道府県旅日記-呑んで,喰うのみ

正月も帰らなかったふるさと一関へちょっとよそ者気分で小旅行してみる。 2020年2月1日(土)-2日(日)

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鮨酒スタート

2020年に年が変わって,初めて盛岡を出た。

年末年始も仕事が忙しくて,世間はやれ9連休だ10連休だとか言ってるなか,大晦日と元日以外は休まず仕事をしていた。

 

で,20連勤だか30連勤だかしたあとに疲労で発熱し,2日ほど寝込んでしまった。

インフルかしらと思ったが,風邪の諸症状は一つもなく,本当に発熱だけだった。

 

そんな風に1月を過ごし,2月最初の土日は法事があり,故郷一関を訪れた。

土曜日2月1日の午前中に法事を済ませ,その後お寺から少し離れたところにある「あさひ鮨」を訪れる。

気仙沼でフカヒレ鮨を出す店として有名だが,こちらで会食ということになった。

 

フカヒレ鮨発祥の気仙沼本店も3.11で被災し,仮設店舗を経て,その後本設となったと聞く。

20年ぐらい前に一度,そして3.11以後の仮設店にも一度足を運んだことがある。

 

気仙沼男山本店の「蒼天伝 特別純米」をもっきりでもらい,鮨やら天ぷらやら茶碗蒸しをつまむ。

久しぶりにあった親族はみな相応に歳を重ねており,当たり前だが自分も同じように歳をとった。

 

握り,ツマミは総じて美味しくいただき,酒も「きりんざん 純吟 生原酒」を追加。

昼からほろ酔いとなり,実家へ帰って夕方まで昼寝した。

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バー「アカンプリス」へ

目覚めると夕食の準備がされていたので,地元の酒「百磐 創業103年記念酒」を呑みつつ晩酌。

しばし酒を呑みつつ近況報告などをし,家を出てまちへ。

 

で,どこに行こうか迷った挙句,何度か訪れたことがあるバー「アカンプリス」へ。

一関のオーセンティックバーと言えば,ここと「アカンプリス」から程近い「シュガーバー」だ。

実は2020年1月末までは,「アビエント」という素晴らしいバーがあったのだが,東京へ移転ということで無期限休業となってしまった。

 

十数年ぐらい前から一関に帰ると顔を出していたバーだっただけに非常に残念だ。

しかし,「アカンプリス」も「シュガーバー」もどちらもとても良い店なので,ふるさとに戻ったらなるべく足を運ばせていただきたいと思う。

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入り口はこちら

「アカンプリス」は一ノ関駅から歩いて5分ぐらいのところにあり,大町銀座の交差点付近にある。

少々わかりづらいが,大町銀座交差点を西側に少し行けば店の灯りが右手に見えるはずだ。

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独特の空気感に落ち着く

女性バーテンダーが,一人カウンターに立つバーで,一人もしくは少人数で訪れるのにちょうど良い店だ。

オープンして10年ぐらいと聞くが,レコードが流れ落ち着いた雰囲気の店内は,それ以上の長い時を経てきたようにも錯覚する。

 

バックバーの酒瓶は一見それほど多くはないように見えるが,女性バーテンダーの仕事を見ていれば,選び抜かれた酒が備えられていることがわかる。

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和製クラフトジンを使ってもらう

ジンリッキーは京都発のクラフトジン「季の美」で作ってもらう。

ライスジンということもあり,ふっくらとした米の甘みが残り,ドライジンで作るジンリッキーとはまた違った面白さがある。

 

さらに,季節のカクテルとしてセロリフィズと甘酒マルガリータを。

繊細な味わいのカクテルが,いつもこの店での愉しみだ。

 

常連客が入れ替わり立ち替わりやってきて,賑やかになったり静かになったり。

カウンターを介して,客は心を解放し嫌なことを忘れていく。

 

地元の有限会社一関ミートの鹿ソーセージを焼いてもらう。

コクのある肉の旨味がたまらない一品で,ウイスキーソーダが進む。

 

酔いすぎる前に店を出る。

仰ぎ見ると,冬の星座が夜の空に広がっている。

 

北極星を目指して帰ろうかと思ったが,実家は南,逆方向だった。

駅前まで歩いて,タクシーを拾った。

満ち足りた気持ちの中,実家へ向かう。

 

タクシーを降りると,街中以上に明かりがない実家周辺は,満点の星空であまりに美しく,寒さを忘れてしばらく星の煌めきに息を飲み,眺めた。

 

暴風吹き荒れる函館で,美唄焼き鳥と朝市名物小皿料理を食べた(3) 2019年12月14日(土)-15日(日)

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19時開店「バー杉の子」

バー「舶来居酒屋 杉の子」は,「やまと」から歩いて数分のところ,同じ松風町にあった。

www.hokkaidolikers.com

さて,松風町であるが,このあたりは「大門」と呼ばれる地区にあり,かつて函館一番の歓楽街だったという。

2月に函館を訪れた際に乗ったタクシーで「最近では大門より五稜郭だね」と聞かされたが,大門地区も駅前の再開発で一時の衰退から立ち直ったとも聞く。

 

事実,駅周辺には大型商業施設が出来ていたり,函館駅前横丁なる複合商業施設がつい最近12月にオープンしたりと新しい開発が見られる。

 

で,大門地区には「函館ひかりの屋台 大門横丁」なる東北以北最大規模の屋台村があり,「バー杉の子」が開店するまでの間,ぶらぶらと屋台を眺めてみる。

www.hakodate-yatai.com

屋台村といえば,八戸の「みろく屋台」も有名で,あちらはあちらで人口密度が高いスポットとなっているが,調べてみたらどちらの屋台村も26店舗が出店しているらしい。

36yokocho.com

 

ただ,観光客の母数が函館と八戸では違うので,どうしても函館の方が賑わっているように見えるし,実際賑わっているのだろう。

どこか入ってみようかとも思ったが,そろそろ「舶来居酒屋 杉の子」の開店時間だったので,大門横丁を後にした。

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連絡船シリーズ「摩周丸

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燻製盛り合わせ

老舗バー「舶来居酒屋 杉の子」は14年ぶり。

ジントニックを呑みながら店主の青井元子さんと話をしていると,「あら,じゃあ移転する前の店にいらしたわけですね」と言われた。

 

で,前の店が載っているという雑誌を見せてもらうと,そうそう,確かにここに載っている店に覚えがある。

14年ぶりとはいえ,まったく今の店に見覚えがないことにも納得だ。

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酒田ケルン井山バーテンダーのオリジナルカクテル「雪国」

オリジナルカクテル,連絡船シリーズ「摩周湖」「八甲田」をいただき,そして最後に「雪国」をオーダー。

そういえば,外は暴風の中で雪も降っていた。こんな夜にふさわしい一杯だ。

finders.me

 「実はわたし,家の事情で酒田に住んでいたことがあるんですよ」とシェイカーに酒を注ぎながら青井さんは話し始めた。

「でも,その当時はこのカクテルのことを知らなくって。。。」と残念そうに笑ってみせた。

 

広い店内はカウンター席のほかにテーブル席,ボックス席,2階席があり,青井さん一人でシェイカーを振るのは大変だろうと見ていると,若い男性店員もシェイカーを振り始めた。

青井さんがその様子を見守りながら,「うん,オッケー」と声をかけると男性店員はシェイクを止めた。

学生アルバイトだろうか,少しほっとした表情を浮かべてカクテルグラスにカクテルを注ぎ入れた。

 

いい店だ,実に,すごくいい店だ。

観光客もいるのだろうが,常連客の質がすごくいい。店と客が一体となっているのがわかる。

 

青井さんも楽しそうに喋りシェイクする。

聞くと,明日61年目の節目だという。

「明日は店が休みなので,お客さんが今日お祝いに来てくださってるんですよ」と言って,わたしに高価なバーボンをショットグラスに一杯青井さんが注いでくださった。

「今日だけの特別サービスです」と青井さんが言うと,同じくカウンター席に陣取っていた常連客が「いい日に来ましたねー」とわたしに向かってにやりと笑ってみせた。

 

「舶来居酒屋 杉の子」,飾らないけれど,大門で60年以上歴史を紡いできた函館の名店である。

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味噌ホルモン串

とてもいい気分で「舶来居酒屋 杉の子」を出た。

あったかくて優しいバーだった。

 

もう少し呑みたい気分だった。

風も雪も酔いで気にならなくなっていた。

 

ムスメに電話してみた。まだ起きてるか,と。

まだ起きてる,と返事があったので,安心してもう一軒酒場へ足を向けた。

 

同じく松風町だが,大門から少し外れたところにある「酒道(さけみち)」へ。

ここは,前回2月に函館を訪れたときにも気になっていた,渋い外観の居酒屋。

 

大門横丁の賑やかさが嘘のように,空き店舗も目立つ寂しげな一帯にぼんやりと灯りがついていて,それがまた堪らない。

 

暖簾を潜って店内に入ると先客は中年カップルと年配の男性。

カウンターの中に立つのは,40代後半ぐらいの店主。

 

カウンター席に座り「熱燗をください」というと,「剣菱でよろしいでしょうか」と聞かれ「それでお願いします」と返す。

 

外観も渋いが店内も渋い,が敷居が高いという感じでもなく,居心地はすこぶるいい。初めての店だが,ひどく落ち着く。

十数人入ればいっぱいになるだろうか,小さな店だ。

 

カウンターの一番奥は円卓のようになっており,面白い造り。そこだけテーブル席のようになっており3,4人の団体客が呑めるようになっている。

その円卓では年配の先客がテレビを見ながら煮物をつついて,ビールを呑んでいる。

 

ホワイトボードのメニューの中に目刺し焼きを見つけ,それを注文すると今は切らしているとのこと。

ので,同じメニューの中からミソホルモン串を見つけ,それを2本注文した。

どっしり旨い剣菱熱燗がなくなったので,“今週の焼酎”「黒伊佐錦350円」を湯割りでもらう。週替わりでおすすめを出しているのだろう。

 

この本日の焼酎は,前割りされたものらしく,黒千代香でじわり温め供される。

久しぶりの黒千代香だなと手酌すると,これが素晴らしく伸びやかな甘みと風味が感じられ,思わず「うんうん」と頷いてしまった。

 

「ご旅行ですか」と店主から話しかけられた。

気づくと先客たちはすでに店を後にしており,店内には店主とわたし二人だけになっていた。

 

そうなんです,と答え,ここは長いんですか,などと尋ねてみる。

14年ですかねーと店主が返してくれ,今日の函館は寒いですねなどと世間話をしてくれた。

 

久しぶりに旨い焼酎の湯割りを呑んだなと店内を見渡すと,本格焼酎の瓶がずらり。

本格焼酎には,かなりこだわりがある店主らしい。

今度函館に来たら,ゆっくり腰を据えて呑んでみたい店だ。

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上品な味わいのおでん

もう一軒,「酒道」の店主に教えてもらった雑居ビルに入る店が休みだったので,同じフロアで目に入ったスナックへ。

気さくなマスターとママが迎えてくれて,ハイボールとおでんをいただいた。

 

盛岡から来た,というと「わざわざ遠くから寒いとろこに来てくれて」と喜んでくれた。

かなり酔っていて記憶が曖昧だが,たしかマスターも岩手出身とか言っていたような記憶がある。

地方都市のスナックもいいものだ。ましてや賑やかなエリアから少し離れたところにある観光客があまり寄り付かないような雑居ビルで,常連客が愉しそうにカラオケを唄っている。こういう地元の日常の光景に身を置くのも,旅行の楽しみだ。

 

三杯ほどハイボールを呑み,店を後にした。

ホテルに戻るとムスメが「遅いよ,もう寝ちゃうところだったよーー」と言ってきた。

「明日は朝6時起床で,朝イチでどんぶり横丁という予定で」とわたしはムスメに話し方が,「てか,そんなに酔っててお父さんが起きれんの?」ともっともなことを言われてしまった。

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またまた「茶夢」

翌朝,6時に無事起き出して再びどんぶり横丁「茶夢」へ。まだどこかに少し酒が残っていたが,「サッポロ クラシック」の中瓶を注文すると,この日も小皿料理がずらり。素晴らしい。

しかし,前の日より小皿の数が増えているような気がするし,野菜っぽい料理が増えている。いやはや,嬉しい。

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ムスメが注文の丼

ムスメはイクラ・海胆・蟹の身が乗った「函館丼」を。こちらは毛蟹汁つきで,毛蟹汁も二日連続。

一口食べさせてもらったが,いや,もう何も言うことがない美味しさ。

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わたしは烏賊刺しを注文。ムスメに食べさせると,「烏賊ってこんなにシャキシャキしておいしいの!?」と驚いていた。

鮮度にも切り方にも,シャキシャキする要素はあるんだろうが,美味しかった。

また,帰り際,女性店員が「昨日と今日とありがとうございました〜」と笑顔で見送ってくれた。

 

朝食を終え,ホテルをチェックアウトしたら赤レンガ倉庫の方面へ路面電車で移動し(車内は外国人観光客ばかりだった),港にある「ハセガワストア」「ラッキーピエロ」でやきとり弁当とハンバーガーを買い求めた。

www.hasesuto.co.jp

luckypierrot.jp

それを持って帰りの新幹線に乗り込み,わたしはやきとり弁当をツマミに缶ビール2本(当然「サッポロ クラシック」)を呑んだ。

 

しかし,両者ともローカルグルメとして有名になるのもよくわかるし,ご当地でも愛されている理由もよくわかる。

 

ハセガワストアのやきとり弁当はというと,豚串の脂と塩胡椒が馴染んだご飯がとても美味しく,ジャンクで止まらなくなる味わいだし,豚串は冷えても柔らかく脂が甘く,ビールによく合う。

ラッキーピエロハンバーガーは,税抜き400円しないのに(「ラッキーチーズバーガー」を買った),圧倒的な存在感のバンズとハンバーガーでソースもそれに負けない味わいで,完成度がとても高い。

 

海鮮,小皿料理,美唄焼き鳥をはじめとした串焼き,ハンバーガーとすべてにおいて満喫した。

なにより,どこに行っても人が良かった。2月の旅も良かったが,今回の旅も楽しかった。

 

そういえば,祖父が存命のころ,祖父から「ウチの先祖はもともと屯田兵で,それから岩手に移って貧しい百姓になった」と聞いたことがある。

 

屯田兵制度は1902年に廃止されている。それ以前は,我が家の御先祖は北海道の地にいたのだろうか。函館も訪れていたのだろうか。

 

前に青森で青函連絡船八甲田丸の船内資料館で,本州と北海道をつないだ青函連絡船の歩みと歴史をじっくりと知る機会があった。青函連絡船は1908年から1988年まで就航し,本州と北海道の橋渡しを担ってきた。そして,数々の悲劇のドラマもあった。

それでも,本州から北海道へ渡る人々,もしくは北海道から本州へ渡る人々,はたまたどちらかからどちらかへ帰る人々は,悲しみや苦しみや希望をおのおのの胸に抱き,船に乗ったのだろう。

aomori-hakkoudamaru.com

もしかしたら,我が家の御先祖も,屯田編制度廃止ののち,何年か北海道にとどまり,その後に青函連絡船で青森,そして岩手へ移り住んだのだろうか,などと思いを馳せなつつ,「舶来居酒屋 杉の子」で女性バーテンダー青井さんが作ってくれたオリジナルカクテル「八甲田」の甘酸っぱい味わいを思い返してみた。

 

盛岡に新幹線が到着すると,ムスメが「盛岡は,函館よりあったかいねーー」とホームに差し込む西日に眩しそうにしながら,言った。

もしかしたら,自分のルーツは北海道にあるのかもしれないなんてことも知らずに。

 

<おわり>

暴風吹き荒れる函館で,美唄焼き鳥と朝市名物小皿料理を食べた(2) 2019年12月14日(土)-15日(日)

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その店は松風町にあった

hitosara.com

さて,夕方になった。「茶夢」でほろ酔いになり,ホテルにチェックインし,少し昼寝したらムスメに起こしてもらいまちに出た。

 

この日は悪天候だった。ひどく寒い上に強い雨が降り,そして風がかなり強かった。

傘が壊れそうになりつつ,風をなんとかいなしつつ,日中は歩いていた。で,日が暮れると雪になった。盛岡も寒かったが,函館はいっそう寒かった。

 

お目当ての店「炭火串焼きやまと」の暖簾をくぐった。まだ新しく,そしてスタイリッシュな外観と内観。

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外は寒いが一杯目は生ビール

雪の中を歩いてきたが,せっかくの北海道なので「サッポロクラシック」の生を。さっそく美唄焼き鳥10本盛りを注文し,ビールをぐいぐい。

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肉肉感がとてもいい

後から入ってきた客は30本焼いてもらっていた。豪華な注文の仕方が慣れた地元客らしい。

さて,焼き上がった「美唄焼き鳥」だが,老鶏(ろうけい)のみを使うという。老鶏とは,排卵期間を終えた雌鳥のことで,若鶏と違って引き締まった食感や深い旨味があると言われている。

 

そしてこちらでは,「美唄焼き鳥」発祥の地である岩見沢からわざわざ老鶏を取り寄せで,そのモツを余すことなく串焼きとして提供しているという。

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地酒と美唄焼き鳥

酒は北海道栗山町の小林酒造「北の錦 まる田 特別純米 無濾過生」をいただく。販売本数限定の希少な酒のようで,濃醇だが口当たりは柔らかく,淡麗でクセがなくキレがあり,食中酒として良い。

 

レバー,砂肝,内卵,ハツ,皮,そして玉葱と一緒に炭火で焼いたモツ串が美味しい。これは想像どおりの味であり,そして想像以上の味である。

ムスメと5本ずつ食べたが,「ぜんぜんまだイケるね」「もう10本お替わりできる」と二人ともまだ食べたりない。

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箸休め

 

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エイヒレも炭火焼き

いったん落ち着こうと新漬けとエイヒレを箸休めに注文したら。

箸休めのつもりも,白菜の旨味がしっかり詰まった新漬けと分厚いが柔らかいエイヒレが実に旨くて箸が止まらない。

 

北海道旭川市は「蛍雪」をいただく。こちらも強さはあるが,重さは感じさせず,米の旨味を備え,そしてキレる。

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北海道のやきとりと言えば豚

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老鶏の実力全開

結局「美唄焼き鳥」の10本盛り合わせのお替わりはせず,北海道のいわゆる「やきとり」を食べてみたくなる。事前学習どおり「やきとり」は豚肉であり,三枚肉を玉葱で挟んで塩胡椒で炭火焼きしたものだった。

こっちはこっちで脂が甘くてとても良く,北海道の串焼き文化の深さがなんとなくわかってきた。

 

また鶏に戻って手羽先焼きは,皮がぱりりと焼き上がっていて香ばしく,そして肉は噛み締めるほどに旨みが滲み出て負けじと美味しい。

 

北海道の串焼き文化にはちょっと驚かされた。東北では焼き鳥(やきとり)というと,せいぜい肉が大きいか変わった部位があるかが物珍しいぐらいで,とはあまり代わり映えはしないスタンダードスタイルだが,北海道の焼き鳥(やきとり)は実に面白い。

 

お目当ての「美唄焼き鳥」を堪能し,店を後にした。

 

<next>

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暴風吹き荒れる函館で,美唄焼き鳥と朝市名物小皿料理を食べた(1) 2019年12月14日(土)-15日(日)

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函館朝市どんぶり横丁

「どうも,北海道には室蘭と美唄という地方のやきとり文化があるらしい」と聞いた。

「室蘭やきとり」は,なんとなく聞き覚えがあったが,「美唄焼き鳥」は初めてだ。

というか,そもそも「美唄=びばい」という地名も聞いた覚えがあるようなないようなだった。

 

「で,その美唄焼き鳥は,鶏の内臓のいろんな部位を寄せ集めて串に刺して,それを塩胡椒で焼いて食べるんだよ」とも聞いた。

 

なんだそれ,すごく旨そうだ。

ごくり,と喉を鳴らしてしまった。

 

「ちなみに室蘭やきとりは,やきとりと言っても豚肉で,豚肉と玉葱を交互に串に刺して焼く。で,洋がらしをつけて食べる」とのことだ。

それも旨そうだ,ぜひとも食べてみたい。

 

思い立って,函館へ向かった。

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海鮮を食しに

donburiyokocho.com

 

今年の2月に愉快な旅の仲間たちと函館を訪れていたが,それから10ヶ月後,再び函館の地に降り立った。

今回の旅は,ムスメを連れ立ってやってきた。函館で本物の海の幸を喰いたいか? と尋ねたら,「いいねぇ」と言ってついてきた。

 

なぜ函館か。焼き鳥(やきとり)の話で,なぜ函館なのか。室蘭や美唄ではないのか。

まあ,その話はおいおいするとして,とりあえず函館朝市のどんぶり横丁へやってきた。

お目当ては,2月の旅で入りそびれた「茶夢」という老舗店。

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ずらり並ぶ小皿料理

2月に来た際も,朝からここで呑もうかと思ったのだが,行列をなしていたので,新幹線の時間もあって断念した店。

で,こちら,なによりサービスの小皿料理がすごい。天然鮪刺し,自家製〆鯖が画像左手に見えるが,それ以外の小皿料理がサービスということになる。

 

北海道の地酒「北の勝」をコップ酒の熱燗でもらい,多種多様な小皿料理と刺身を愉しむ。

地元民も目指してくる店ということらしいが,それもわかる気がする。40代ぐらいの女性店員二人で切り盛りしていて,適度に狭くて居心地が良い。いやはや,いい店だ。

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これは珍味「いかのふの粕漬け」

しかしさすが北海道函館。本鮪も〆鯖もレベルが高い。ムスメも「おいしーーーー!」といきなりハイテンション。

13時過ぎということもあり,この日は店内落ち着いており,ゆっくりカウンター席で二人で食事する。

 

ムスメは追加で毛蟹汁を注文し,「うわっ,ナニコレ,今まで食べた毛蟹ってなんだったの」と旨さに驚いている。

どれどれと一口汁をすすってみると,なるほど,毛蟹の濃厚な旨味が溶け出しているが味噌は上品控えめで,飽きのこない味わいとなっている。

 

「お酒にあいますよ」とさらにサービスしてくれた「いかのふの粕漬け」がまた絶品。

「北の勝」をお替わりし,ちびちびつまみながら,この珍味を堪能する。

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松風町菊水小路

さて,焼き鳥(やきとり)の話に戻す。

 

どこかで近くで手っ取り早く「室蘭やきとり」と「美唄焼き鳥」を食べることはできないだろうかと探したが,なかなか見つからなかった。

盛岡はもちろん聞いたことないし,東北一の歓楽街国分町を擁する仙台にもなさそうだった。青森,八戸,秋田あたりもそれらしい店はなく,東北までは進出していないようだった。

 

ちなみに焼き鳥(やきとり)文化は全国各地で独特のスタイルを確立しているらしい。

一般的に「日本七大焼き鳥(やきとり)」とも言われ,美唄・室蘭(北海道),福島(福島),東松山(埼玉),今治(愛媛),長門(山口),久留米(福岡)がそのご当地だ。

matome.naver.jp

 

muro-kanko.com

 

www.zenyaren.jp

 

そうこうして,室蘭に美唄に焼き鳥(やきとり)を食べたいなと思いつつ月日が流れ,函館旅行を敢行する数日前にムスメが「函館に行きたい」と言い出した。

ムスメは,数年前に修学旅行で函館を訪れているのだが,久々にテレビで函館のまちを目にし,懐かしくなったのだという。

 

軽い気持ちで言ったのだろうが,「ちょっと行ってみるか?」と誘ってみたらついてきたわけだ。

早速,函館旅行のスケジューリングをしつつ,宿と新幹線を押さえ,函館の夜はどこで一杯呑ろうかとネットで検索していたら見つけたのだ,「美唄焼き鳥」の店を。

 

さらに調べると,「美唄焼き鳥」は地元ではモツ串と言われるらしく,そのモツ串を函館で提供する店は札幌の名店から暖簾分けされ,開店から2年も経っていないようだった。

 

「海鮮は朝市で味わうとして,夜は美唄のモツ串にしない?」とムスメに提案すると,「いいねー,焼き鳥もいいねー」と賛同してくれ,即座の夜の店も決定した。

 

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待望の美唄焼き鳥

行き先も決まった,宿も決まった,新幹線も決まった,そして函館の目的も決まった。

あとは天気次第だなと思いながら,週末を待ち遠しく感じながら数日を過ごした。

 

こういう経緯で函館にやってきた。

<next>

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冬来たる盛岡で,「仮想・一人旅」気分で呑み歩き,老舗スナックで大先輩たちと歌った夜 2019年12月7日(土)

休日出勤していたら,急に一人で旅に出たくなった。

札幌,いや新潟も捨てがたい,京都は今年行ってないな。。。などと旅へと思いを馳せ,google mapを開いて,その札幌やら新潟やらのまちを仮想で歩き回ってみた。

 

ホテルは空いているか,移動手段はどうしようかとさらに思い巡らせてみた。

が,「アホかオレは,こんなに仕事溜まって休日出勤してるのに,旅どころじゃないだろ。仕事片付けなきゃ年末年始をゆっくり迎えられないだろ」と現実に戻り,ぱたぱたと仕事を再開した。

 

しかし,どこか出かけたい気持ちを消え去ることができなかった。

仕事どころではなくなり,早めに休日出勤を切り上げ家に帰り,「ちょいと友だちと呑むことになった」と家族に伝えて家を出た。

 

そして,さも今さっきホテルに荷物を置いて,まだ明るいうちから旅先で一人呑みをはじめようというシチュエーションであると思い込むことにして,“仮想・一人旅”気分で盛岡のまちを呑み歩いてみることにした。

まあ,くだらない“ごっこ遊び”というヤツだが,自由になれると自分の心は浮き立っていた。

 

一軒目に訪れたのは,八幡のやきとりの名店「菊すい(いつも「菊水」なのか「きく水」なのか「菊すい」なのかわからなくなる」のお隣に,今年の夏に新規開店した「晴れる家 ひろき」の暖簾をくぐる(「ひろき」は脱サラしてこの店をオープンさせたご主人の下の名前である)。

 

15時オープン,ドリンクはセルフというシステムの個性的な店だが,ご主人は至ってまともな方。勤め人時代はだいぶ呑み歩きがお好きだったらしく,市内飲食店のことには随分お詳しい。

で,飲食好きが高じて,定年退職前に早期で仕事を辞められ,店を出したという。

 

ドリンクは黒ホッピーを氷なしで。片口に注いだキンミヤを,きんきんに冷えたジョッキに入れ,やはりキン冷えの黒ホッピーをどぼどぼ注ぐ。

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鮪刺し700円。これで一人前

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キク汁500円。こちらも一人前がたっぷり

ツマミは,鮪刺しとキク汁。

午前中に軽く適当なものを口にしただけでエライ空腹だったのと,まるで1月厳寒期かのような冷え込みで,すっかり体が芯から冷え切っていたので,汁物を注文してしまった。

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暖簾

こちらの店の暖簾,八幡の老舗名店「水前寺」から贈られたものだという。たしかに暖簾には「水前寺より」としっかり入っている。

なんでもご主人は「水前寺」に足繁く通っておられた縁もあり,「水前寺」の大将もいろいろ応援してくれたという。

 

まず出された鮪は,養殖のそれとはまったく別物の色合いと食感,味わい。

これも鮮魚系にめっぽう強い「水前寺」と同じ仕入れか何かだろうか(今度聞いてみよう)。

 

「キク汁」は,今から春を迎える真鱈の白子入りの塩ベースのもの。

真鱈の身も入り,体が暖まる贅沢な一品。

 

呑みながら,食べながら,ご主人と盛岡の飲食店について今のこと昔のことを話す。

自家製塩辛を追加で注文し(たっぷりの肝が使われていて旨い),これから上田通まで歩いて足を伸ばし,十数年ぶりに呑むのだという話をすると,「お,では『トクちゃん』とかですか?」とご主人。

 

さすがわかってらっしゃる,「トクちゃん」は,上田通で一,二を争う名酒場。わたしは,十数年前まで近くに住んでいたから,わりとよく足を運んでいた店だ。

上田通は八幡から徒歩で40分程度,5,6kmは離れていようか。中心市街地北側の文教地区・住宅街である。岩手大学も近いので,学生が多いエリアだ。

 

黒ホッピーは外をお替わりし,鮪刺し,キク汁,塩辛で2000円ちょっと。

滞在時間は1時間といったところ。

 

二軒目「トクちゃん」までは,予定通り八幡から歩いた。

途中トイレ休憩でスーパーに寄って,一軒知り合いのワインショップに立ち寄り,時間調整をしつつ,中央病院前に「Nagasawa Coffee」の一瞬場違い感もある洒落た店舗を眺めつつ,「トクちゃん」が開店する17時半に店に到着した。

 

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よく目立っていた大提灯はなくなったらしい

迎えてくれたご主人と女将さん,十数年ぶりにお邪魔したと話すと「すっかり齢をとったし,お客さんも変わってきた」と笑顔で話した。

 

生ビールを呑みつつ昔話をする。景気が良かった時代,岩手大学の学生が溢れていた時代,不便だったけど心底楽しかった時代。

上田通にはもっともっと飲食店があり,年がら年中週末だろうとなかろうと,日が暮れると会館(上田会館,八重洲会館)からは嬌声があがり,今はなくなった「光楽園」は学生たちが朝まで呑み,同じくなくなった「鳥信」は渋い焼鳥店,同様の「養老乃瀧」は激安呑み放題ができ,やはりなくなった「政」は小洒落た居酒屋だったがラーメンがとても美味しかった。

 

そして,「さわ」という喫茶店も好きだった。ハヤシライスが美味しい店で,呑んだ後に洋食を食べたり甘いものを食べたりした思い出の店。

ご主人と女将さんに聞いてみたが,今も営業しているかどうかはわからないという。

 

以前訪れていた時は刺身類と日本酒(昔から『よえもん』がある)だったが,この日はご主人が担当するやきとりをいただく。皮,シロ,砂肝,ハツ,カシラを焼いてもらい,ちびちび「よえもん」を。

少しするとわたしより一回りぐらい年上の女性二人客が入ってきて,隣の席に座り,女将さんと世間話をし始めた。どうやら常連らしい。

 

やきとりは,小ぶりでどれもぱりっとかりりと焼けていて,塩が薄めでしみじみとした味わいが,なんだかどこか懐かしい昭和の味。

鮮度が良くジューシーでしっかりとした肉を使ったやきとり(焼鳥)もいいが,良い意味で脂気の少ないものも,干物を食べているようで趣がある。

 

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「こういうのでいいんだよ」的なツマミ

本柳葉魚の干物もあるようなので,それも焼いてもらう。

「しっかり干してるから,さっと炙っただけで美味しいですよ」と女将さん。

 

こちらも期待通りのしみじみと旨く,お隣二人客は本鮪のカマトロ刺しを美味しそうに食べているが,このときはやきとりと柳葉魚で十分だった。

「こういうのでいいんだよ」と満足し,グラスに少し残った「よえもん」をぐいっと空け,会計をした。

 

「トクちゃん」を後にし,上田通を中心市街地に向かって歩いていると,霙が強く降ってきた。

“仮想・一人旅”のわたしは,旅支度に抜けがあって傘を持っていなかったので,「これはいかん」と中央病院前の屋根付きのバス停に逃げ込み,やってきたバスに乗って映画館通のど真ん中で降りた。

 

少し迷って,程近いオーセンティックバー「バッカス」の扉を押した。

なんとなく,このあたりは“旅してる感”が薄いので,あえて避けようとしていたのだが。

 

とはいえ,霙で寒いしトイレにも行きたいしで,若干妥協モードで「バッカス」の暖かな店内にほっとし,お通しのコンソメスープに一息つき,一杯目はアイリッシュコーヒーを注文した。

 

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寒い夜に呑みたいカクテルの一杯

店内は10人ぐらい,5,6組の先客があり,わたしはカウンター一番奥の席に通された。バーテンダーの所作から客の様子まで綺麗に見通せるウォッチングには最適の位置取りであった。

店内を眺めながら一杯目アイリッシュコーヒーを空けたところで,いつも相手をしてくれる若い女バーテンダーが店の奥から現れ,「今日は何軒目ですか?」と訪ねてきた。

 

「盛岡に旅行に来て,一人呑み歩きしてるって遊びしてるんですよ。んで,今日は午後3時から呑み始めて三軒目です」と話したら,「相変わらず楽しい呑み方してますね」と笑ってくれた。

 

「次,どうなさいます」

「んでは,雪国を」

「あ,もしかして雪国の映画,ご覧になりました?」

「・・・いえ,外が霙模様だったので。。。」

「(笑) はい,かしこまりました」

 

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とても美しいカクテル「雪国」

カクテル好き,バー好きなら知らない人はいないだろう,日本のオリジナルカクテルでありスタンダードカクテルとなった「雪国」は,酒田のバー「ケルン」で名バーテンダー井山計一氏の手によって1958年に誕生した。

井山氏は90歳を超えた今でも現役バーテンダーとしてカクテルを作り続けられておられ,その生涯が「YUKIGUNI」と題してドキュメンタリ映画化され,今年上映されたのだ。

 

盛岡では11月中旬に一週間程度上映されたらしいのだが,残念ながらわたしは見逃した。次回チャンスがあれば,と思っている次第であった。

 

さて,その女性バーテンダーが手際良くシェイクして作ってくれた「雪国」は,甘口ではあるがライムジュースの爽やかさが巧くマッチし,さすが戦後最高の国産カクテルと言われる一杯である。

だいぶ久々に呑んだが,改めてその旨さに感動した。

 

歩いて八幡へ戻った。

霙は止み,傘がなくても歩けるようになっていた。

 

八幡の隣,松尾町は盛岡劇場のすぐ脇にある「リッチ」というスナックへ足を運んだ。

このあたりの酒場事情に詳しい,とある飲食店店主から「あの『リッチ』っていうカラオケスナックは,立派なカウンターがあってなかなかのものです。景気の良い時代は,女の子を5人も6人もカウンターに立って相手してくれてましたね。今じゃママ一人ですけど」と聞いており,この日は“仮想・一人旅”なので,旅に出る前に情報を収集していたという体で訪れてみる。

 

普段常連客ばかりだからだろうか,店に入るとママが少しびっくりしたような顔を見せ,ワンテンポ遅れてから「いらっしゃいませ」と立ち上がった。

 

「一人です」というとカウンター席を勧められ,呑みものはどうします? と聞いてきたので,「ハイボールお願いします」と答えた。

すぐに作ってくれたハイボールは「角ハイ」で,これをちびちび呑りながら,紹介されて来てみたことを話していると,ママの表情も和らいで来て,いろいろ話をしてくれた。

 

昔は若い女性店員を何人も使っていたこと(聞いていたとおりだ),最近では呑みに出る人も減って寂しくなってきたこと(上田通と一緒だ),たまに来てくれるのは自分より年上の70代80代の客ばかりになったことなどなど。

 

お年寄りの居場所になってるってことか,と思いながら話を聞いていると,店のドアが次々と開き,次々と人生の先輩方がカウンター席に座り始めた。

連れてこられた若い女性客もいたが,わたしを加えて店内平均年齢は平気で70代は行っていたと思う。

 

で,先輩方の元気さがすごい。おのおの十八番があるのだろう,どんどん曲を入れて歌い始め,そして先輩方の歌がすごく上手い。

あっけにとられていると,近くに座った先輩が,「ほら,おにいちゃんも負けずに歌って」と予約入力端末を渡してくるので,焦りつつ先輩方の年代に寄せて(といっても,まったく演歌とか歌謡曲知らないから寄せ切れないのだが),サザンオールスターズの古い曲などを入れてみた。

 

緊張の中で歌い終えると,「いいねーー,良い声してるよ,うちの合唱団入んない? わははは」と奥の先輩が声をかけてくれた。

いや,合唱はちょっと。。。と冷や汗をかきつつハイボールをすすり,それから何曲か歌い(歌わされ?),結局3時間近くも「リッチ」に居座ってしまった。

 

先輩たちとの別れ際,「おにいちゃん,絶対またここで会おうな。若い人いないと,店もまちはダメになるから」と言ってもらった。おにいちゃんとか,若い人とか言われたが,そういう自分もいい歳なんだよなーと思いつつも,やはりそう言ってもらえたことは,まちと先輩方に受け入れてもらえたような気がして嬉しかった。

 

“仮想・一人旅”のラスト一軒は,八幡のさらに裏側にあるディープスポット,「裏八幡」ことウラハチ界隈へ足を運んだ。

ウラハチは,八幡の通りの一本南側の通り沿いあたりのことを,界隈の飲食店仲間たちが称しているローカルな呼称で,先ほどの「リッチ」から歩いて数分のところにあるが,「リッチ」が大先輩方のたまり場となっている一方で,ウラハチはディープ八幡ゾーンの中でも比較的若い30〜50代ぐらいの遊び人が集うエリアとなっている。

 

この個性的な店が集まるウラハチで,核となる飲食店となっているうちの一つ「La-Tida」を訪れてみる。一見外からは営業しているように見えない隠れ家的バー(?)は,若い女性店主が一人店に立つ激狭店であり,人気店である。

 

こちらも「リッチ」のことを教えてくれた某飲食店店主から教わった店で,「遅い時間からしか営業しない」と聞いていたので,午後11時をまわったところでちょうど良かった。先客は2名で,聞くと八幡界隈で呑んでいたらしい。

 

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昔箱買いしていた好きな銘柄

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活性酒とフルーツはいいもんだ

ドリンクは「仙禽 しぼりたて活性濁り 雪だるま」があったので,それを。盛岡ではなかなかお目にかかれない一本。

お通しは,嬉しいことにフルーツ盛り合わせ。酔いの回った体に,果物の甘さが実に優しい。

 

さらに一人男性客が来店し,それだけで店が狭いので一体感が生まれる。

わたしは一見であったが,ウラハチ仲間として大いに盛り上がる。

 

某店主からオープン時間が遅いと聞いた話をすると,「えーー,遅いって言っても,20時半には開けてますよーーー」と,女性店主はそんな風に言って明るく笑ってみせた。

この笑顔と愉しい仲間たちと酒を求めて,夜な夜なウラハチには人が集まるんだなとじわじわわかってきた。

 

人と人との距離が近いのが,この八幡界隈。

かつては上田通もそうだったはずだし,実際そうだった。

 

けど,寂れた寂れたといわれる八幡にもウラハチのように勢いを感じるエリアもあり,上田通だってお洒落な「NAGASAWA COFFEE」のような,20年前には考えられなかった人気珈琲店ができ,ところどころに古い建物を使った若者向けの店も見られるなど,変化の萌芽は確実にあるんだろうと思う。

 

今回の“仮想・一人旅”は,なんだか古き良き思い出に浸るための呑み歩きとなったようにも見えるが,そうではなく,次の時代へ変わりつつ移行期としての盛岡のまちを俯瞰できるきっかけになったようにも思える。

 

実に,いい旅立った。

秋の仙台で,柔らかな仙台弁と燗酒の優しさに包まれたのであった。(3) 2019年11月14日(木)-22日(土)

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金華鯖

土曜の朝,少し胃のもたれを感じながら目覚めた。ホテルの室内は寒かった。エアコンを消して寝たのだが,朝方にはすっかり冷え切ってしまったらしい。

熱いシャワーを浴び,身支度をしたのち,外へ散歩に出た。仙台はずいぶん気温が下がったらしく,盛岡から来た自分からしてもかなり寒く感じられた。

 

しかし,一人旅はいい。好き勝手,身勝手に振る舞っても誰にも迷惑がかからない。

いつ食事してもいいし,いつ寝ても遊んでもいい。

 

ということで,そんな気ままな旅を続けているわけなので,仙台駅S-PALにある「塩竈 すし哲」の暖簾をくぐり昼酒モードである。胃のもたれはすっかりなくなっていた。

実は,この日の昼は文化横丁の名店「小判寿司」と思っていたのだが,予約で一杯とのことだった。

 

で,気を取り直して開店直後の「すし哲」にて,生ビールを注文すると北寄貝のポン酢和えが出され,ちびちび呑りはじめる。

店内は開店直後からほぼ埋まり,駅という立地もあるが,さすがは人気店といったところか。

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鮪串焼き

「両関 本醸造」を冷や(常温)で一合もらい,金華鯖お造りと鮪串焼きを肴とする。

カウンター席は男女とも年配の客が多く,みなコースの握りを食べている。酒を呑む客もちらほらおり,鮨屋での昼酒を愉しむ仲間がいて少し嬉しくなる。

金華鯖は流石の脂の乗りであり,鮪串焼きもとろとろの甘みであった。

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小肌,帆立

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海胆

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本鮪赤身

煮蛸ではじめ,鰯,鯵,小肌,帆立,本鮪赤身,海胆と握りをいただく。コースにはせず,お好みで握ってもらう。

もう少し食べたかったが,夜のこともあるので軽めに抑えた。

鮨はどれも流石の旨さであるが,「両関」が鮨によく合って感心した。秋田の老舗蔵の実力を改めて知った。

なお,握りのコースは,それぞれ1700円〜4000円程度となっており,一番高そうな4000円ぐらいのコースは11〜12カン,プラスお吸い物と水菓子といった感じであった。

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入店からものの10分で酒と魚が揃う

正午前に昼酒を済ませ,しばし仙台駅,S-PALで土産物などを物色したのち,いったんホテルに戻り昼寝。

昼寝から目覚めた夕方は,土日は16時開店となる仙台の超人気酒場「居酒屋 ちょーちょ」を訪れる。

国分町3丁目のこの人気店は,年がら年中予約困難とも聞いていたので,飛び込みで入れたらラッキーぐらいの気持ちで足を運んでみたが,「18時までなら」という条件付きで入ることができた。

 

で,その通り16時少し過ぎたあたりに入店し,小ビールを呑み,お通しのきのこ汁を食べ終えたぐらいで,茄子煮浸し,刺し盛り,日本酒(栃木は小山市の「若駒」)とあっという間に酒と肴が揃った。

 本当はもう少し軽めに呑みたかったが,対応してくれた若い女性店員に上手く勧められて,あれこれと注文してしまった。のんびり少しの酒と肴で小一時間ほど過ごせればと思っていたのだが。

 

一人前にしてもらった刺し盛り三点は,函館の鰤,石巻の平目と鰆,八戸の鯖と北国の魚たち。「18時までとこちらの都合でお願いしてたので,四点盛りにサービスしてきおました〜」とくだんの女性店員。こういう細かい心遣いは嬉しいものだ。

刺身はどれも一級品。昼に食した鮨ダネと較べるのもナンセンスだが,負けず劣らず美味しくいただけた。

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活気あふれる店内

厨房には調理担当が4人,フロアは接客担当の女性スタッフが2人と席数にしては充実した体制。どの店員も若く元気で店内は絶えずスタッフの声が行き交っている。

それを落ち着かないととるか,元気があっていいと感じるかは人次第だろうが,お年を召した方にはちょっと合わないかもしれない。

ワタクシ自身は,最初こそは「少し声が大き過ぎやしないか,ここの店員」と思っていたが,例の女性店員をはじめ,何人かの店員に気を遣って声をかけてもらっているうちに,その声は全然気にならなくなってきた。

とにかく接客が素晴らしいのだ。声が大きいのは,オーダー漏れがないように,そして互いの仕事をフォローし合うようにしているためなのだろう。

酔いも回って居心地が良くなり,料理人たちのしっかりとした仕事ぶりをぼんやり眺める。

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自家製さつま揚げ

自家製のさつま揚げは,「新宿西尾」から教わったという一品だが,新宿の西尾とは三丁目にある「西尾さん」のことだろうか。行ったことはないが,人気の高い有名店だ。

このさつま揚げがとても美味しい。外側はかりり,内側はふわわ。

箸で割いて,醤油を垂らした鬼おろしを乗せてアツアツを「山和 燗純米」を熱燗で。

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炭火で焼いた鰯

この店イチオシだという八戸の鰯は丸々と太っていて,炭火で遠火の強火の加減で焼かれており,ジューシーかつしっとりとした身とパリパリの皮目となっている。串のまま齧り付いて,内臓まで綺麗にいただいた。

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バーアンダンテ

すっかり満腹となり,30分ほど歩いて腹を落ち着かせたあと,「バーアンダンテ」に顔を出した。水戸さんに昨晩からこれまでの足取りを話しながら,ジントニックをまずはいただく。

素晴らしい味わいの一杯。五臓六腑に染み渡った。

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バックバーが美しい

そして,ふっと顔を上げると美しいバックバーが目に飛び込んでくる。規律を持って整然と並んだ酒瓶がライトアップされ,ある種の芸術品。

ダイキリを呑んでいると,「国分町ではないですが,『すずりき』という肴町公園側の居酒屋は落ち着いていていいお店ですよ」と水戸さんに紹介された。

腹もすっかり落ち着いたので,もう一軒,その「すずりき」にでも足を運んでみることにして,水戸さんに礼を述べて店を後にした。

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時の堆積が確かにある

しかし,結局「すずりき」には足を運ばず,またもや「くろ田」に足を向けてしまった。幸い一席だけ空いていたので,そこに座らせてもらってホッピーと煮込み,そしてこの日はハラミをいただくことにした。

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お替わりしたくなる煮込み

この日の煮込みもとても美味しい。ぱらり振られた黒胡椒がいいニュアンスとなり,辛めのスープはいくらでの飲めそうだ。

ふわふわの豆腐と柔らかなホルモンも前日と変わらぬ旨さ。

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角の立った肉たち

この日は一番奥の席に陣取らせてもらった。入口からは店が狭くて入っていけないスペースなので,店の裏口の方から入らせてもらう。目の前には冷蔵ケースがあり,どの肉もひと目で鮮度の良さがわかる美しい色合い。

お母さんのお孫さんであろうか,それともバイトであろうか,若い女性店員が,お母さんと同じ調理用白衣を着て一生懸命働いている。その働きぶりが微笑ましく,きっと看板娘なんだろうなあと想像した。

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炎が立ち上り煙が満ち溢れる

なんだか寒いなあと思っていたら,後ろの窓が開いている。閉めようかと思ったが,はたと気づいた。煙がすごいからときどき開けて換気しているのだ。

なるほどと思ったが,真冬はどうなるんだろうかと少し心配になった。この寒さでビールやホッピーを呑むのはそろそろ限界だろう。

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魅惑のハラミ

前の晩に食べずに後悔していたハラミは,20〜30cmほどのハラミ肉を焼き網で炭火焼し,それを若い女性店員がハサミで食べやすくカットし,皿に盛り付け醤油ダレをかけ擦り下ろしたニンニクを添えれば完成。

 

これがまた旨くてホッピーが進む。寒かったので氷は足さず,ナカをお替わりし,ホッピーをぐいぐい呑んだ。

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また会いましょう

帰り際,前の晩と同じようにお母さんが「ありがとねーー」と声をかけてくれた。はじめは少し気難しい人なのかと思ったけれど,そうではなくて優しい人だとわかってきた。

お孫さんかどうかわからないけれど,女性店員と二人で,この歴史あるやきとり店で毎夜毎夜,客のためにやきとりとハラミを焼き,煮込みを仕込み続けているのだ。あったかい,優しい店なのだ。

 

 □

 

「炉ばた」が無性に恋しくなった。また,女将さんの柔らか仙台弁を聴きながら「天賞」の熱燗を呑みたくなった。

ワタクシは,この気持ちは微かにいつも抱いている故郷への想いなのだと,どこかで気付いていた。懐かしさと優しさで包んでくれる,生まれ育った土地への永遠に忘れることがない大切で強い想いだとわかっていた。

 

そして,そういった大事な想いを多くの人々から一瞬で奪った3.11へと思いを巡らせた。

荒浜地区もそうだったし,被災したすべてのまちがそうだったのだ。

 

誰にとっても大事なものを奪って行ったあの災を忘れてはならないし,次に必ずくるであろう災とどう向き合うのかを,こうやって今でも頻発している災害と相対しながら考えなければならないのだった。

 

そんな覚悟に似た気持ちの中でワタクシは,次の朝一番の新幹線で盛岡へ帰ることを思い出し,ホテルへ戻ることにした。家には家族がおり,週明けからは仕事もある。好き勝手に一人でふらふらしてばかりいて,迷惑をかけてはいられないと酔った頭の中で強く思ったからだ。

 

仙台で味わわせてもらった優しさの余韻に包まれながら,歩いてホテルへと向かった。

風がひどく冷たくて,ワタクシは背中を丸めて歩いて,歩いて,歩いた。

秋の仙台で,柔らかな仙台弁と燗酒の優しさに包まれたのであった。(2) 2019年11月14日(木)-22日(土)

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津波で松林が消失し海が見えるようになった

金曜も朝から会議だったが,早めに終わったので震災遺構「仙台市立荒浜小学校」へ連れて行ってもらう。2011年3月11日の津波で,800世帯2,000人強が住んでいた荒浜地区はほぼ消失し,この小学校だけが残った。

 

あの日,ここで被災し荒浜小学校の屋上へ避難し難を逃れたかつての住民の方の話を伺ったのだが,本当に辛く胸が締め付けられる。あれからもうすぐ9年になるが,あの時の記憶はまだ薄れておらず,そして心の痛みも変わっていない。

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壱弐参横丁の老舗鰻店

荒浜小学校のある仙台市東部から昼前に仙台中心部へ戻り,ホテルでスーツから私服に着替えた。呑んで喰っての復興は,まだまだ必要なのだ。

 

午後は休暇を取得していたから,この時点から歓喜のフリータイム。はやる心を押さえつつ,昼ごはんはどうしようかと足早であっちへこっちへ歩いて辿り着いたのは壱弐参(いろは)横丁の鰻店「明ぼ乃(あけぼの)」。

旅行中だから,鮨・天ぷら・蕎麦・鰻のどれかだなと考えたどり着いたのがここで,なんでも,「ブラタモリ」にも出たことのあるということで,明治元年1868年創業とか。

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品書き

狭い店だから昼時は混んでいると訊いていたが(ブラタモリ効果とも訊く),13時過ぎだったということもあってか,先客は一人だけ。

テレビの前の一人席に通され,うな重と酒を注文した。が,今思えば,酒はうなぎ酒にすれば良かった。非常に悔やまれてならない。

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熱燗と香の物

高齢の御夫婦が切り盛りし,昭和感が完全に残った店内はひどく落ち着き,熱燗をちびりちびり呑りながら糠漬けをつまんで鰻が焼き上がるのを待つ時間がとてもいい。

第二次大戦で前の店は焼失し,今の場所に移ったらしいが,秘伝のタレだけは持ち出して逃げて今の今まで継ぎ足しているらしい。

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ご飯に乗せていただく

10分もかからず焼き上がった鰻はふっくらつやつや。重は二段になっており,ご飯と鰻が別々になっているスタイル。これはご飯にタレが移ってないタイプの鰻重なので,一切れずつご飯に乗せ,タレをご飯に移しつつ山椒をぱらりぱらりとかけて一口いただくと,ぱりりと焼き上がった皮は心地良く香ばしく,肉厚の身は脂が程良く品のある旨味に溢れている。

 

こうなると燗酒が旨いわけだが,あくまでちびりちびりと鰻を食するペースに合わせて呑む。少々品がない食べ方だが,ご飯は鰻蒲焼にかかっていて,重の底に残ったタレにつけて堪能する。

 

肝吸いがついて3,500円は普段の昼食代からするとだいぶ豪華だが,このレベルの鰻重を食べたと思えば高くない。昼からいい店に巡り合えた。

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炉ばた発祥の地

さて,夕方までホテルで休息をとって英気を養った。17時前に部屋を出て,国分町は稲荷小路にある「郷土酒亭 元祖 炉ばた」へ。17時開店と同時に店内へ入ると,70ぐらいの女将さんが出迎えてくれて,「いらっしゃい,寒いですねぇ」と声をかけてくれた。

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お膳三品は1200円

ワタクシは盛岡の人間だが,生まれ育ったのは岩手県南一関で,そこは元々は仙台伊達藩の領地だったということで,女将さんの仙台弁は耳に心地良い。

もしかすると,若い人には聞き取りづらかいところもあるのかもしれないが,ワタクシには故郷を思い出させてくれて,非常に懐かしい。

 

最初に出されるお膳は,野菜の煮物,帆立稚貝とアスパラの煮付け,秋刀魚佃煮。で,これもなんだか懐かしい。使われる食材といい,見た目・色合いといい,実際の味わいといい,祖母の手料理に良く似通っている。

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こういう雰囲気には焼き物がよく合う

にしても,昼間の「明ぼ乃」ほどではないものの,こちらも創業から69年と歴史は長い。1950年だから,戦後の混乱が収まりつつある中で,この店,このスタイルは生まれ,そして日本中に「炉端,炉ばた」を名乗る飲食店が出現し始めたようだ。

 

女将さんの話を訊くと,このスタイルを認めた店は,全国でわずか3,4店舗程度であり,あとは勝手に名乗った,いわば言い方は悪いが模倣して増えていったようだ。

が,こういった業種で模倣というか良いとこどりで提供するサービスの質を高めるのは決して悪いことではないとも言え,多くの飲食店なりサービス業はそうやって変化・進化しながら切磋琢磨しているのだとは思う。

 

で,その1950年に天賞酒造の三男が創業したのがこの店で,お膳も当時は五品を供し,天賞酒造の酒を振る舞ってきたのだとか。

このあたりの歴史の話を伺いながら,追加でししゃも焼きをもらいつつ,その「天賞」の熱燗を二合ほどいただく。

 

興味深い話は柔らかな仙台弁で語られ,そして燗銅壺で温められた柔らかい燗酒が木のヘラで供され,しみじみ呑みながら69年の歴史の重みを感じるひと時が実にたまらない。

素晴らしい名店,盛岡にあったら通いたいと思っていたら,実は盛岡にも正式に屋号とスタイルを引き継ぐことを認められた店があったという。

八幡町にあったというが,確かに言われてみればあった。足を運んだことはないが,あった。

 

その女将さんは病気がちで長く続けられなかったらしいが,そんな酒場が盛岡にもあったのだ。

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国分町の名店

続いて訪れたのは「炉ばた」から程近い「やきとり 黒田」。文化横丁「きむら」と並んで仙台でも老舗と呼ばれるやきとり店である。

一度お邪魔してみたいと思いつつ,機会がなくて今回が初訪問となった。 

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これぞ焼きとり酒場

運の良いことに席が空いていたので,入り口からすぐの席に腰を下ろす。

と,年配のお母さんが「呑み物は? ビール? ホッピー? 日本酒?」と訊いてきたので,「ホッピーを」と答える。矢継ぎ早に「やきとり? ハラミ?」と畳み掛けられ,一瞬「ん?? やきとり? ハラミ??」と混乱しつつ「やきとりで」と返す。

ちょっと,お母さんの勢いに気圧される。

 

後から知ったのだが,こちらの店は呑み物・煮込み・やきとりもしくはハラミのセットを最初に注文するスタイルのようだ。

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煮込みとホッピーは酒場によく合う

煮込みはちょっと味わったことのないもの。スープは味噌や醤油や塩ベースのよくあるものではなく,唐辛子がよく効いていてキムチチゲのようだ。で,意外とさっぱりしていてとても美味しく,そしてホルモンは色々な部位が入っていて,驚くほど柔らかく煮込まれている。

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手ブレした

やきとり,というかやきとんはタレでいただいたが,これも美味しい。肉自体も大ぶりで食べ応えがあって5本セットで十分満足できた。

「ハラミ」も気になったが,さすがに苦しくなって煮込みとやきとりで終わりにした。

追加注文しなくても,最初のセットだけでもなかなかのヴォリューム。次々と客が入ってきたので,席を立って場所を空けて店を後にした。

「ありがとね〜」と仙台弁とも少し違う訛りの声を背に,賑わう国分町の通りに出た。

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質実剛健

 「やきとり くろ田」を出て,「バーアンダンテ」の水戸さんに教えてもらった「バーアルカンシェル」へ。

歩いて一分もせずに着けると思ったのだが,なかなか見つからない。「お兄さん,一軒どうですか,いいコいますよ」と囁いてくる風俗店の客引きに「アルカンシェルって,どこっすか?」と訊くと「あ,あそこのビルの地下っすよ」と教えてくれた。

こういうとき,客引きのお兄さんは大抵優しく教えてくれるから便利だ。

 

「バーアルカンシェル」は素晴らしい店だった。

正統中の正統,とでも言うべきか,全てにおいて正しく真っ直ぐで品がある。

 

バーテンダーの石垣さんは石巻御出身とかで,3.11の折には大変胸を痛められただろう。その石垣さんのカクテルは,スーズトニック,バーテンダーグラスホッパーといただくと,どれも素晴らしく美味しい。

 

昼の「明ぼ乃」,夜の「炉ばた」「くろ田」と老舗を歩き,締めはオーセンティックバー。最高の一日となった。

 

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