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旅をする。赴くままに旅をして、通りがかった暖簾をくぐり、カウンター席で酒を呑む。※コロナで旅ができないので、昔の旅についても載せることにしました。

初夏の東京にて江戸三大酒場「鍵屋」「シンスケ」で酒場の底力に触れる旅(1) 2019年7月5日(金)-6日(土)

梅雨も明け切らぬ7月の初め,九州の友けんじさんが上京すると聞いた。けんじさんとは,2017年の9月に九州を台風の中,一緒に旅して以来だ。

tabi-ki.hatenablog.comで,久々にけんじさんと痛飲してみたいものだと思い,ワタクシもスケジュールを合わせて上京しようかと試みた。

幸い,その週末に予定は入っていなかったのだが,6月末から仕事の立て込み方が半端ない感じであり,7月初めまでそれが影響することも考えられ,一抹の不安も残る上京日程となりそうだった。

 

が,「まあなんとかなるでしょう,なんとかするでしょう,なんとかしちゃいましょう」と,いつもの楽観主義・御都合主義で金曜・土曜と上京することとし,宿と新幹線の手配をした(このへんの意思決定と段取りの素早さは,われながら褒められる長所ではないかと思う)。

 

けんじさんは木曜・金曜と出張と在京し,土曜に宮崎へ戻るという旅程となっていた。

当初ワタクシ自身も同じ旅程を考えていたが,直前になってばたばたと仕事が入ってきたため,泣く泣く金曜・土曜とせざるを得なくなった。

 

金曜は金曜で午前中に来客対応があった。この対応を済ませたのち,午後から休暇を取得し,12時50分発の新幹線で東京を目指した。

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シェフズ弁当はご飯別売り

「まずは酒と肴を調達しないわけにはいかんでしょう」ということで,駅ビルフェザンの「シェフズ弁当」にて上田の鮨店「金太楼」のご褒美弁当(おかず)800円也を購入。

続いて「ジュピター」へ移動し,タイのビール「シンハー」とイタリアの「モレッティ」を買い求めた。蒸し暑かった金曜の午後,ビールを呑みたくて呑みたくて仕方なかった。

 

新幹線では早速「シンハー」を開け,ぐびぐびと一気に半分ほど呑み,ご褒美弁当をつつく。「金太楼」には足を運んだことはないが,料理は総じて上品な味付けで好感が持てる内容だった。

さらに,いつものようにiPadで映画鑑賞をしながら2時間少々。「モレッティ」も空けて,あっという間に東京に到着。東京駅から宿のある浅草橋まで山手線と総武線で移動した。

いつもの宿「東横イン」にチェックインし(11ポイント貯まった。もうちょっと温存しよう),シャワーを浴びたのち,荷物の整理をし,16時半ごろにホテルを後にした。

 

この日は18時に根岸の「鍵屋」集合となっていた。けんじさんは仕事を終えたあと直行すると言っていたので,ワタクシも遅れないようにとホテルを出たわけだが,ただ電車で移動するのも味気ないので,下町を眺めながら歩いて「鍵屋」を目指すことにした。

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夕方だったせいかおかずも人も少なかった

 

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日本で二番目に古い商店街とされる

根岸までは電車で移動すれば最寄駅は鶯谷駅であるが,とりあえずそこまで歩いてみることにして,台東区の下町をぶらぶらしながら少しずつ近く。

まずは鳥越の「おかず横丁」を経由し,秋田藩を由来とする「佐竹商店街」を過ぎる。

ときおり雨がぱらつき,蒸し暑い東京をのんびり歩く。金曜の夕方近く,ひと気の少ない静かなまちを行く。

 

少し前にとある建築士の講演で,「景観は,そこに住む人々の文化と営みによって形成される」と聞いたが,東京の下町はまさにそうだ。人々の暮らしが,そこかしこに滲み出ており,それがまちなみを形作っている。

 

関東大震災を,第二次世界大戦を,高度経済成長を,そして失われた十年二十年をくぐり抜け,平成を過ぎ令和に至る。

そんな人の姿,まちの姿が目にまざまざと飛び込んでくるから東京は面白い。

そして,東京2020オリンピックでどうなっていくのか,などと思いつつ上野に差し掛かると,上野周辺の変貌ぶりもすごい。

 

聚楽」のあったあたりも再開発で綺麗な商業ビルが建ち,変わらぬ雰囲気と思えたアメ横御徒町付近もすっかりインバウンドを通り越して外国人が牛耳っているように見えるまちになった。

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江戸創業の酒場「鍵屋」

さらに歩いて歩いて鶯谷駅。そこから少し歩いて,お目当の「鍵屋」へ。

ここではけんじさんと,そしてもうひと方,古い呑み仲間「うにさん」と待ち合わせていた。

うにさんとは盛岡で数度呑んでいるが,うにさん自体は盛岡出身で東京に住んでおられるやはり酒を愛する方で,今回の旅の初日はこの3人からなる愉快な仲間たちで呑むこととしていた。

 

うにさん,けんじさんと再会を喜び合いつつ,「いやはや」「やれやれ」「ごぶさたです」「ではでは」などと言って「鍵屋」の暖簾をくぐる。

 

さて,その「鍵屋」であるが,東京においても老舗中の老舗の酒場で,“江戸三大酒場”の1つとも言われている。

なお,他の2つの酒場は,湯島「シンスケ」,大塚「江戸一」であり,この日は「鍵屋」のあとは「シンスケ」を予定していた。

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みそまめがしみじみ旨い

カウンターに陣取り,サッポロ赤星大瓶を3人で呑み喉を潤していると,名物のみそまめ(煮豆)が供される。このみそまめ,ワタクシにとっては,長い間憧れてきたお通しである。

茹で大豆が出汁醤油につかっているシンプルな肴だが,どこか奥深い味わい深い一品。自宅で何度か作ってみたが,実物をいただいてみると,ワタクシはまったく明後日の方向の,実物とは似ても似つかないものを作っていたのだとこのとき気づかされる。

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パリッとした食感にジューシーな味わいのとり皮やき

「とり皮やき(二本560円)ならすぐ出るよ」と御主人が言うので,それをいただくことに。四代目店主清水賢太郎さんは,見た目それなりにお年を召しているようだが,仕事をする手元は一切ぶれることなくしゃっきりとしている。

そして,料理が乗った皿も実に渋くてよろしい。

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うなぎのヒレの部分と肝が串に巻かれている

で,ワタクシはひたし豆同様,かねてから食べてみたかった「うなぎくりからやき(一本520円)」を3本注文すると,「はい,くりからあと一本!」と御主人が声を出す。おそらく,これに呼応する客がいたりいなかったりというコールなんだろう。

なんとも雰囲気が良く,うにさん,けんじさん,ワタクシと寛ぎつつもテンションマックスとなり,入店5分と経たずにビールを干し,「櫻政宗熱燗を二合!」と燗酒モードに突入する。

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ガス式燗銅壺

目の前の燗銅壺が見事な年季の入りようなので,御主人に「作れる職人さん,まだいらっしゃるんですか?」と聞いてみると,国内3人のみだという。

そんな貴重な燗付け器でゆっくり温まった燗酒の美味いこと美味いこと。

 

「お座敷空きましたけど,どうなさいます?」と女性の店員さんに声をかけてもらうが,「いや,カウンターでいいです。カウンターがいいです!」うにさんが即座に笑顔でその申し出をお断りする。

けんじさんもワタクシもまったくもって同意であり,その様子を御主人の嬉しそうな笑顔を見せてくれる。

 

そこから,「味噌おでん(豆腐・ちくわぶ・こんにゃくで570円)」「さらしくじら(780円)」「とりもつやき(二本570円)」「たたみいわし(680円)」「お新香(500円)」を肴に,「菊正宗 生もと」「大関 おおからくち」と燗を各二合ずつ呑む。

次の日は車を運転しなければならないといううにさんも,「いや,このペースはまずいなあ~」と言いながらすいすいと盃を空けていく。

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味噌おでん

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さらしくじらは酢味噌がまた旨い

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たたみいわし

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お新香

どこから来たの? と御主人に聞かれたわれわれは,東京・宮崎・岩手とそれぞれ答えると,「で,何しにここまで?」とさらに聞かれたので「この店で呑むために」と答えると,再び御主人は嬉しそうに「それはそれは,ありがとうございます」と笑ってみせた。

 

さすが江戸が誇る名店。

酒も肴も申し分なく,時の体積を感じさせる店内は他に替えるものがない雰囲気を湛え,そしてなにより御主人の素朴かつ丁寧な対応が心地良く,われわれ三人は,最高の気分になっていた。

「いい人,いい酒,いい肴」と,居酒屋研究家の太田和彦さんのいうところの良い酒場の条件3つがぴたりと揃っている。

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今も昔も変わらぬ品書き

入店から一時間強。燗酒も3人で五合ほど呑んだ。「櫻正宗」から,「菊正宗」「大関」と,どの燗具合もぴたりだった。

 

金曜の夜ということで,早い時間から客が出たり入ったり。もう少し居座りたい気持ちもあれど,われわれも長っ尻は野暮だろうということで,頃合いを見計らって会計をお願いした。

「明日から朝顔まつりだから団扇もっていってくださいね」と,席を立ったわれわれに御主人。せっかくだからと朝顔まつりの団扇をいただき,少々後ろ髪ひかれながら,江戸三代酒場のひとつ「鍵屋」を後にした。

 

なお,昔のブログを漁ってみたところ,久々の再開となったうにさんとは,東日本大震災の4ヶ月ほど前2010年10月末に盛岡でご一緒していた。

その時は,桜山「茶の間」〜同じく桜山「MASS」〜中ノ橋通「ビアバー ベアレン」〜大沢河原「熊ヶ井旅館食堂」〜駅前「ディエス・オーチョ」〜同じく駅前「盛楼閣」と錚々たる店を呑み歩いていたことが判明した。

いやはや,今も昔も呑み過ぎなわれら愉快な仲間たちなのだった。

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9年前の「MASS」での一コマ

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