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旅をする。赴くままに旅をして、通りがかった暖簾をくぐり、カウンター席で酒を呑む。※コロナで旅ができないので、昔の旅についても載せることにしました。

暴風吹き荒れる函館で,美唄焼き鳥と朝市名物小皿料理を食べた(3) 2019年12月14日(土)-15日(日)

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19時開店「バー杉の子」

バー「舶来居酒屋 杉の子」は,「やまと」から歩いて数分のところ,同じ松風町にあった。

www.hokkaidolikers.com

さて,松風町であるが,このあたりは「大門」と呼ばれる地区にあり,かつて函館一番の歓楽街だったという。

2月に函館を訪れた際に乗ったタクシーで「最近では大門より五稜郭だね」と聞かされたが,大門地区も駅前の再開発で一時の衰退から立ち直ったとも聞く。

 

事実,駅周辺には大型商業施設が出来ていたり,函館駅前横丁なる複合商業施設がつい最近12月にオープンしたりと新しい開発が見られる。

 

で,大門地区には「函館ひかりの屋台 大門横丁」なる東北以北最大規模の屋台村があり,「バー杉の子」が開店するまでの間,ぶらぶらと屋台を眺めてみる。

www.hakodate-yatai.com

屋台村といえば,八戸の「みろく屋台」も有名で,あちらはあちらで人口密度が高いスポットとなっているが,調べてみたらどちらの屋台村も26店舗が出店しているらしい。

36yokocho.com

 

ただ,観光客の母数が函館と八戸では違うので,どうしても函館の方が賑わっているように見えるし,実際賑わっているのだろう。

どこか入ってみようかとも思ったが,そろそろ「舶来居酒屋 杉の子」の開店時間だったので,大門横丁を後にした。

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連絡船シリーズ「摩周丸

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燻製盛り合わせ

老舗バー「舶来居酒屋 杉の子」は14年ぶり。

ジントニックを呑みながら店主の青井元子さんと話をしていると,「あら,じゃあ移転する前の店にいらしたわけですね」と言われた。

 

で,前の店が載っているという雑誌を見せてもらうと,そうそう,確かにここに載っている店に覚えがある。

14年ぶりとはいえ,まったく今の店に見覚えがないことにも納得だ。

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酒田ケルン井山バーテンダーのオリジナルカクテル「雪国」

オリジナルカクテル,連絡船シリーズ「摩周湖」「八甲田」をいただき,そして最後に「雪国」をオーダー。

そういえば,外は暴風の中で雪も降っていた。こんな夜にふさわしい一杯だ。

finders.me

 「実はわたし,家の事情で酒田に住んでいたことがあるんですよ」とシェイカーに酒を注ぎながら青井さんは話し始めた。

「でも,その当時はこのカクテルのことを知らなくって。。。」と残念そうに笑ってみせた。

 

広い店内はカウンター席のほかにテーブル席,ボックス席,2階席があり,青井さん一人でシェイカーを振るのは大変だろうと見ていると,若い男性店員もシェイカーを振り始めた。

青井さんがその様子を見守りながら,「うん,オッケー」と声をかけると男性店員はシェイクを止めた。

学生アルバイトだろうか,少しほっとした表情を浮かべてカクテルグラスにカクテルを注ぎ入れた。

 

いい店だ,実に,すごくいい店だ。

観光客もいるのだろうが,常連客の質がすごくいい。店と客が一体となっているのがわかる。

 

青井さんも楽しそうに喋りシェイクする。

聞くと,明日61年目の節目だという。

「明日は店が休みなので,お客さんが今日お祝いに来てくださってるんですよ」と言って,わたしに高価なバーボンをショットグラスに一杯青井さんが注いでくださった。

「今日だけの特別サービスです」と青井さんが言うと,同じくカウンター席に陣取っていた常連客が「いい日に来ましたねー」とわたしに向かってにやりと笑ってみせた。

 

「舶来居酒屋 杉の子」,飾らないけれど,大門で60年以上歴史を紡いできた函館の名店である。

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味噌ホルモン串

とてもいい気分で「舶来居酒屋 杉の子」を出た。

あったかくて優しいバーだった。

 

もう少し呑みたい気分だった。

風も雪も酔いで気にならなくなっていた。

 

ムスメに電話してみた。まだ起きてるか,と。

まだ起きてる,と返事があったので,安心してもう一軒酒場へ足を向けた。

 

同じく松風町だが,大門から少し外れたところにある「酒道(さけみち)」へ。

ここは,前回2月に函館を訪れたときにも気になっていた,渋い外観の居酒屋。

 

大門横丁の賑やかさが嘘のように,空き店舗も目立つ寂しげな一帯にぼんやりと灯りがついていて,それがまた堪らない。

 

暖簾を潜って店内に入ると先客は中年カップルと年配の男性。

カウンターの中に立つのは,40代後半ぐらいの店主。

 

カウンター席に座り「熱燗をください」というと,「剣菱でよろしいでしょうか」と聞かれ「それでお願いします」と返す。

 

外観も渋いが店内も渋い,が敷居が高いという感じでもなく,居心地はすこぶるいい。初めての店だが,ひどく落ち着く。

十数人入ればいっぱいになるだろうか,小さな店だ。

 

カウンターの一番奥は円卓のようになっており,面白い造り。そこだけテーブル席のようになっており3,4人の団体客が呑めるようになっている。

その円卓では年配の先客がテレビを見ながら煮物をつついて,ビールを呑んでいる。

 

ホワイトボードのメニューの中に目刺し焼きを見つけ,それを注文すると今は切らしているとのこと。

ので,同じメニューの中からミソホルモン串を見つけ,それを2本注文した。

どっしり旨い剣菱熱燗がなくなったので,“今週の焼酎”「黒伊佐錦350円」を湯割りでもらう。週替わりでおすすめを出しているのだろう。

 

この本日の焼酎は,前割りされたものらしく,黒千代香でじわり温め供される。

久しぶりの黒千代香だなと手酌すると,これが素晴らしく伸びやかな甘みと風味が感じられ,思わず「うんうん」と頷いてしまった。

 

「ご旅行ですか」と店主から話しかけられた。

気づくと先客たちはすでに店を後にしており,店内には店主とわたし二人だけになっていた。

 

そうなんです,と答え,ここは長いんですか,などと尋ねてみる。

14年ですかねーと店主が返してくれ,今日の函館は寒いですねなどと世間話をしてくれた。

 

久しぶりに旨い焼酎の湯割りを呑んだなと店内を見渡すと,本格焼酎の瓶がずらり。

本格焼酎には,かなりこだわりがある店主らしい。

今度函館に来たら,ゆっくり腰を据えて呑んでみたい店だ。

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上品な味わいのおでん

もう一軒,「酒道」の店主に教えてもらった雑居ビルに入る店が休みだったので,同じフロアで目に入ったスナックへ。

気さくなマスターとママが迎えてくれて,ハイボールとおでんをいただいた。

 

盛岡から来た,というと「わざわざ遠くから寒いとろこに来てくれて」と喜んでくれた。

かなり酔っていて記憶が曖昧だが,たしかマスターも岩手出身とか言っていたような記憶がある。

地方都市のスナックもいいものだ。ましてや賑やかなエリアから少し離れたところにある観光客があまり寄り付かないような雑居ビルで,常連客が愉しそうにカラオケを唄っている。こういう地元の日常の光景に身を置くのも,旅行の楽しみだ。

 

三杯ほどハイボールを呑み,店を後にした。

ホテルに戻るとムスメが「遅いよ,もう寝ちゃうところだったよーー」と言ってきた。

「明日は朝6時起床で,朝イチでどんぶり横丁という予定で」とわたしはムスメに話したが,「てか,そんなに酔っててお父さんが起きれんの?」ともっともなことを言われてしまった。

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またまた「茶夢」

翌朝,6時に無事起き出して再びどんぶり横丁「茶夢」へ。まだどこかに少し酒が残っていたが,「サッポロ クラシック」の中瓶を注文すると,この日も小皿料理がずらり。素晴らしい。

しかし,前の日より小皿の数が増えているような気がするし,野菜っぽい料理が増えている。いやはや,嬉しい。

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ムスメが注文の丼

ムスメはイクラ・海胆・蟹の身が乗った「函館丼」を。こちらは毛蟹汁つきで,毛蟹汁も二日連続。

一口食べさせてもらったが,いや,もう何も言うことがない美味しさ。

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わたしは烏賊刺しを注文。ムスメに食べさせると,「烏賊ってこんなにシャキシャキしておいしいの!?」と驚いていた。

鮮度にも切り方にも,シャキシャキする要素はあるんだろうが,美味しかった。

また,帰り際,女性店員が「昨日と今日とありがとうございました〜」と笑顔で見送ってくれた。

 

朝食を終え,ホテルをチェックアウトしたら赤レンガ倉庫の方面へ路面電車で移動し(車内は外国人観光客ばかりだった),港にある「ハセガワストア」「ラッキーピエロ」でやきとり弁当とハンバーガーを買い求めた。

www.hasesuto.co.jp

luckypierrot.jp

それを持って帰りの新幹線に乗り込み,わたしはやきとり弁当をツマミに缶ビール2本(当然「サッポロ クラシック」)を呑んだ。

 

しかし,両者ともローカルグルメとして有名になるのもよくわかるし,ご当地でも愛されている理由もよくわかる。

 

ハセガワストアのやきとり弁当はというと,豚串の脂と塩胡椒が馴染んだご飯がとても美味しく,ジャンクで止まらなくなる味わいだし,豚串は冷えても柔らかく脂が甘く,ビールによく合う。

ラッキーピエロハンバーガーは,税抜き400円しないのに(「ラッキーチーズバーガー」を買った),圧倒的な存在感のバンズとハンバーガーでソースもそれに負けない味わいで,完成度がとても高い。

 

海鮮,小皿料理,美唄焼き鳥をはじめとした串焼き,ハンバーガーとすべてにおいて満喫した。

なにより,どこに行っても人が良かった。2月の旅も良かったが,今回の旅も楽しかった。

 

そういえば,祖父が存命のころ,祖父から「ウチの先祖はもともと屯田兵で,それから岩手に移って貧しい百姓になった」と聞いたことがある。

 

屯田兵制度は1902年に廃止されている。それ以前は,我が家の御先祖は北海道の地にいたのだろうか。函館も訪れていたのだろうか。

 

前に青森で青函連絡船八甲田丸の船内資料館で,本州と北海道をつないだ青函連絡船の歩みと歴史をじっくりと知る機会があった。青函連絡船は1908年から1988年まで就航し,本州と北海道の橋渡しを担ってきた。そして,数々の悲劇のドラマもあった。

それでも,本州から北海道へ渡る人々,もしくは北海道から本州へ渡る人々,はたまたどちらかからどちらかへ帰る人々は,悲しみや苦しみや希望をおのおのの胸に抱き,船に乗ったのだろう。

aomori-hakkoudamaru.com

もしかしたら,我が家の御先祖も屯田編制度廃止ののち,何年か北海道にとどまり,その後に青函連絡船で青森,そして岩手へ移り住んだのだろうかーーーなどと思いを馳せなつつ,「舶来居酒屋 杉の子」で女性バーテンダー青井さんが作ってくれたオリジナルカクテル「八甲田」の甘酸っぱい味わいを思い返してみた。

 

盛岡に新幹線が到着すると,ムスメが「盛岡は,函館よりあったかいねーー」とホームに差し込む西日に眩しそうにしながら,言った。

もしかしたら,自分のルーツは北海道にあるのかもしれないなんてことも知らずに。

 

<おわり>