年度末。仕事もようやく道筋が見えてきて,なんとか新しい年度を迎えられそうな雰囲気になっていた。
気持ちにもゆとりが出てきて,天気もいいのでふらり2時間ほど街中を散歩する。
ちょっと喉が渇いたのと小腹が空いたので,木伏緑地にある「モツレ」という大衆酒場の暖簾をくぐると,先客が大ジョッキで生ビールを酌み交わしていた。
「小生で」
「はい」
おしぼりを受け取りながら,「サッポロ黒ラベル」のグラス生ビールを注文した。
この店,お通しはないので,一品目から好きなものを注文できる。
「お待たせしました,小生です」
すぐに目の前に出された小生ビールは,きめ細かい泡がグラスのふちから少し流れ出しており,それがまたビール欲をそそり,思わず喉がごくりと鳴る。
それにしても3月も末にならんとし,ようやく暖かさを感じられるようになってきた。
外を歩く人々の服装も春のそれになってきて,相変わらずマスクはしているが,誰しも訪れつつある春に喜びを覚えているように見える。
さて,5分ほど悩んだ末に「煮込み650円」を注文した。
牛すじ,豆腐,煮卵が豪快に盛り付けられた,真っ黒な煮汁が印象的なひと品。
生ビールを呑み干し「龍泉八重桜」を熱燗で一合もらう。
ぷはあ。
昼過ぎから呑む熱燗の染み入ることよ。
熱燗をちびちび呑りながら,とろとろの牛すじ,味の染みたふわふわ豆腐,ぎゅっと味が凝縮した煮卵をやはりちびちびつまむ。
味は濃すぎず薄すぎず。
練り辛子と七味を使ってアクセントを加えながら,熱燗と煮込みをのんびりゆっくりと。
いい休日。
酒場の有線は,昭和歌謡曲が流れている。
いい雰囲気,いい気持ち。